ホモトピー論を勉強するときの参考文献
ホモトピー論全般
[Gray], [Husemoller]は修士の1年のときに読んだ本。いずれも安定ホモトピーに特化して書いているわけではないが、代数トポロジーの入門としては良いように思う。
[Switzer]や[Spanier]は有名だが、実はまじめに読んだことはない。辞書として使ったのみ。
[Adams]は、Part IIの"Quillen's work"が向き付け可能な一般コホモロジーと形式群の入門編になっている。Part IIIは、安定ホモトピー論の入門書。最近ではElmendorf-Kriz-Mandell-Mayにもスペクトラムの話が書いてあるらしいが、そっちは読んでないので知らない。
[Ravenel_1]はかなり専門家向けで読むのが一苦労だが、Appendix1のHopf algebroidの入門編、Appendix2のFormal Group Lawの入門編は、よくまとまっていて欠かせない。ただ、ミスプリントがかなり多いので、正誤表(第1版用と第2版用)と一緒に読む必要がある。第7章の内容に大きなミスがあったので、大幅に書き直されて2002年にAMSから改訂版が出版された。依然として多少の誤植はあるのだが、前ほどは気にならない。
[Ravenel_2]は、HopkinsらによるTelescope予想以外のRavenel予想の大筋の解決法を解説したもの。Appendix1が(特に安定)ホモトピー論の大まかな入門編、Appendix2がコボルディズム理論のそれぞれ入門になっている。読みやすい。Appendix3は、type nの(つまり、n番目のMorava K群が非自明で、n-1番目以下は全て自明の)スペクトラムを構成するために必要なyoung図形の入門編など。
[Hovey-Palmieri-Strickland]は、安定ホモトピー論の公理化を試みたもの。
[Nishida]は、SerreのC理論を勉強するのに使った。
[Tamaki]は、日本語で書かれたネット上のものとしてはおそらく最も丁寧かつ膨大。早くこれを出版して欲しい。
一般コホモロジー論
古典的には[Adams], [Araki]が有名であるが、今から学ぶ人にとっては[Kono-Tamaki]が楕円コホモロジーなどの最近の話題も取り扱っている。さらに、モデル圏や単体的な手法や、スペクトラムの現代的な構成を付録で解説されているのでお薦めである。
非安定Adams-Novikov スペクトル系列
Bendersky, Davis, Mahowaldなどがこの方面の仕事で有名。コンパクトLie群のv1-periodicホモトピー群については、Davisの一連の著作がある。
形式群について
Formal Group by Strickland (Stricklandのページから入手可能)
楕円コホモロジー
その他、参考文献としてRochester大学のページにも多く掲載されている。
Topological Modular Form
数々ある楕円コホモロジーの普遍的な理論として、Hopkinsなどによって1990年代に整備されたが、これについては
Supplementary notes for Math 512 by C.Rezk
を読めばモジュラー形式やHopf algebroidとの関連が、また
Computation of the homotopy of the spectrum tmf by Tilman Bauer
が具体的なExt群の計算を扱っている。
Motivic Homotopy
基本的には、Voevodskyの論文を読むのが望ましいのだろうが、根気がない私は積ん読で終わらせてしまっている。どちらかというと、Motivic的なコボルディズム理論に興味があるので、柳田先生の論文を読んだ。さらに最近、J.HornbostelさんがMotivicでChromatic的な方法を試みていることに気が付く。現在こちらの研究も進行中。
その他
球面のホモトピー群については、Jie Wu氏の論文がブレイド群などとの関連を調べている。
代数トポロジーの歴史ものとしては、J.P.MayのホームページにあるSTABLE ALGEBRAIC TOPOLOGY. 1945--1966もある。